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宮崎市佐土原町の内科医院です。

消化器・胃腸科が専門で、胃カメラや大腸内視鏡、腹部エコーでは鎮痛・鎮静剤を使い、苦痛の少ない検査を心がけます。
循環器や呼吸器、感染症やアレルギーも診療します。

また、介護支援専門員が介護や認知症のご相談に応じます。
なお、禁煙補助薬や男性型脱毛症治療薬も処方します。
平日8:30~12:30
14:00~17:30
水・土曜  8:30~12:30

(なお、午前中 8:30~9:00に胃カメラや腹部エコーなどの検査が入っている場合は、外来診療の開始は午前 9:00からになります)

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現在放送中のNHKの連続テレビ小説「半分、青い。」の主人公、楡野鈴愛(にれの・すずめ)は、小学3年生のとき、左耳の聴力を失ってしまいます。おたふくかぜ(ムンプス)のウイルスに感染して起きた合併症の「ムンプス難聴」が原因です。おたふくかぜは、治るからといって、甘く見てはいけない感染症です。
 おたふくかぜが流行するのは、晩冬から春先にかけてです。ウイルス感染症によくある発熱、頭痛、筋肉痛といった症状に加え、耳の前にある耳下腺が腫れるのが特徴です。大半の人は、治療なしに数週間で治りますが、おたふくかぜに「効く」治療薬はまだないのが現状です。
 おたふくかぜの感染力は、麻疹ほど強烈ではありません。風疹のように妊婦に感染して子供に先天奇形を起こすリスクもほとんどありません。しかし、集団発生で大量の患者が出ると、一定の割合で重大な合併症が起こります。
 特に多いのが精巣炎です。これは 思春期以後の男性の2~3割程度に起きます 。熱と痛みと腫れがひどいのが特徴で、1割程度は受精能力が低くなってしまいます。卵巣炎も思春期後の女性の5%に発症します。そのせいで、まれながら閉経が早まることがあります。ただ、「おたふくかぜで女性が不妊になる」という明確なデータはありません。
 脳などの神経への影響もあります。おたふくかぜは、無菌性髄膜炎の原因になります。脳炎や脊髄炎は、さらに重大な合併症です。「難聴」「体のまひ」「歩行困難」が起き、生活の質を著しく損なうことがあります。医療では、生活を守ることも大事です。日本では 2015年~16年の2年間に、おたふくかぜの合併症で難聴になった人が約350人いました。
感染期間の長さも特徴的です。麻疹や風疹が発症後5日間なのに比べ、9日間ほどと、長いのです。
 学校保健安全法では「耳下腺、顎下(がっか)腺又は舌下腺の 腫脹(しゅちょう)が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止」となっており、おたふくかぜにかかったら10日程度欠席する必要があります。子供が発症したら親は世話をするでしょう。共働きの家庭が多い今、これは大きな問題です。当然、大人がかかったら職場に行くべきではありません。
日本ではおたふくかぜは軽視されており、社会の備えができていないのが現状です。
 諸外国には、麻疹(measles)、おたふくかぜ(mumps)に風疹(rubella)の頭文字をとった「MMR」という「三種混合ワクチン」があり、小児に2回接種することになっています。
 MMRは、かつて日本でも定期接種していました。しかし、脳に影響を与える「無菌性髄膜炎」の副作用が問題になり、1993年に事実上終了してしまいます。その後、「無菌性髄膜炎」が副作用として出るのは、MMRの中の「おたふくかぜワクチン」のためだと判明。これを除いた「麻疹・風疹ワクチン(MRワクチン)」が導入されました。現在も小児の定期接種にはMRワクチンが使われています。
 問題なのは、ワクチンで予防できる「おたふくかぜ」が、無菌性髄膜炎を引き起こすことです。しかも、ワクチンの副作用リスクよりも、感染症の発症リスクの方が大きいのです。
 前述のようにおたふくかぜに有効な治療法はありません。しかし、ワクチン接種という有効な予防法があります。ところが、以前のものより副作用も減っているワクチンが定期接種に組み込まれていないため、接種者数はとても少ないのです。すべての人が接種すべきというのが国際的には常識なのにです。
 米国予防接種諮問委員会「ACIP」は昨年、すでに2回の接種を受けていても、おたふくかぜが流行のために感染リスクが高い時は、 3回目の接種をするように推奨 しました。これは、臨床試験などで集団発生時には3回目の接種を追加すると、2回だけの接種よりも有効だとわかったからです。
 日本ではこうした新しい研究成果が発表されても、国立感染症研究所のホームページでも、そのデータは反映されていません。
 日本は昔から予防接種後進国だと言われています。今回のおたふくかぜの現状を考えると、その「周回遅れ」の状態がさらに増して、世界からまた引き離されてしまったようです。